イチ*コイ

―小さな幸せ




 新年も明けて、今日から新学期。


「ふぁ…」


 あーねむ…。

 ケータイを見ても、何の連絡もナシ…か。

 何で俺がこんな朝早くから駅にいるのかと言うと…美華だ。

 中学校区域はちげぇけど、お互い自分の家から近い駅が同じなんだ。

 ようするに待ち合わせ、だ。

 いつもは早いのにおせぇし。


「あっ…、斗真!」

「…おせぇよ」

「ごめんね、…おはよう」


 赤チェックのマフラーに顔をうずめながら笑う美華。

 よかった…どっかで事故ったのかと思ったぜ。


「…はよ」


 手を差し出せば、笑って握ってくる。

 ただそれだけなのに、胸の奥がポカポカした。


「寒いねぇ…」

「冬だしな」

「あ、カイロ持ってきたよ!」


 はい、と渡されたカイロは仄かに暖かかった。

 右手は俺と繋いでるし、左手に持たせたほうがいいか。

 駅の中は外よりマシだけど微妙に寒いし。

 声をかけようと思って、美華の顔を見る。

 寒さのせいか少し顔が赤い。

 なんとなくその頬に触れてみた。



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