【盲目の天使】番外編
間抜け面した俺を置き去りにして、ルシルはさっさと自分の部屋へと戻っていく。
「ちょっと待って!」
俺は必死でルシルの肩に追いすがった。
けど、ルシルは俺の言葉なんて完全に無視して、むしろ歩く速度を速めた。
「ルシル!」
「送ってくださって、どうも」
ルシルは目もあわせずに、自分の部屋のドアを閉めようとして。
俺は、閉じかけた扉に左足を突っ込んで、なんとか体をねじ込ませた。
「仕方ないじゃないか!俺とカルレイン様じゃ、立場が違う・・ルシル?」
ルシルは俺に背を向けたまま、俺が渡した手ぬぐいで盛大に鼻をかんだかと思うと、
そのまま身動きしなくなった。
「立場が違ったって、会いに来ることはできるじゃない・・」
カルレイン様は、一番にリリティス様に会いにいらっしゃったわ、と
ルシルがやっと聞き取れるくらいの声で付け足した。
そうか、さっきカルレイン様は大馬鹿って怒鳴ってたけど、
あれには、俺への言葉も含まれてたんだ。