【盲目の天使】番外編

俺は、ルシルの肩に手を置くと、そっとこちらを振り向かせた。

抵抗されるかと思ったけど、ルシルはすんなり俺のほうを向いてくれた。


「ごめん、ルシル。ただいま」


俺が、しっかりとルシルの瞳を見つめると、ルシルははじめて飛び切りの笑顔を見せた。


「おかえり、マーズレン」


俺が、ルシルをきつく抱きしめると、ルシルも俺の背中にそっと手を回してくれた。



これって、そういうことだよな?



カルレイン様と違い、それほど女性慣れしていない俺は、

今人生で初めてというくらい、緊張で心臓の音が激しく鳴り響いている。


ルシルとの間に、少しの空間を作ると、彼女が俺を見上げてきた。


その瞳は、いつもの彼女からは想像もできないほどに色気があって。

俺は、その唇に誘われるかのように、ごく自然に唇を重ねた。

ルシルの唇は、少しだけ震えていて、でもとても暖かくて、心地よかった。


後から考えれば、このときちゃんとルシルへの気持ちを伝えておくべきだったんだ。

口付けだけじゃなくて、ちゃんと言葉で。

< 40 / 90 >

この作品をシェア

pagetop