【盲目の天使】番外編
俺は、ルシルの肩に手を置くと、そっとこちらを振り向かせた。
抵抗されるかと思ったけど、ルシルはすんなり俺のほうを向いてくれた。
「ごめん、ルシル。ただいま」
俺が、しっかりとルシルの瞳を見つめると、ルシルははじめて飛び切りの笑顔を見せた。
「おかえり、マーズレン」
俺が、ルシルをきつく抱きしめると、ルシルも俺の背中にそっと手を回してくれた。
これって、そういうことだよな?
カルレイン様と違い、それほど女性慣れしていない俺は、
今人生で初めてというくらい、緊張で心臓の音が激しく鳴り響いている。
ルシルとの間に、少しの空間を作ると、彼女が俺を見上げてきた。
その瞳は、いつもの彼女からは想像もできないほどに色気があって。
俺は、その唇に誘われるかのように、ごく自然に唇を重ねた。
ルシルの唇は、少しだけ震えていて、でもとても暖かくて、心地よかった。
後から考えれば、このときちゃんとルシルへの気持ちを伝えておくべきだったんだ。
口付けだけじゃなくて、ちゃんと言葉で。