【盲目の天使】番外編

月がちょうど真上にかかる頃、俺は母を訪ねた。

といっても、いつもの母の部屋ではなく、月明かりさえ届かぬ薄暗い牢へ、だ。


それは、つい3日前のこと。


リリティス様がプロン王に毒を盛ったとして、囚われてしまったんだ。

もちろん、俺はそんなこと信じていないけど、確かにリリティス様が身に着けていた首飾りから毒が発見されたわけで。

今のところ、リリティス様が疑われて塔に幽閉されている。

当然のように、リリティス様付きの侍女頭である母とルシルも捕らえられてしまった。


ノルバスではそれなりに地位のある母は、今のところ、牢に入れられていても、

それほどの不自由はないし、俺との面会も少なからず許されていた。



「母上、大丈夫ですか?」


「マーズレン。私のことはいいから。

王子はどうなさっているの?」


母は、今にも倒れそうな顔色の悪さだ。

しかし、気丈な母が心配されるのを嫌うから、俺はそういったことは言葉にしなかった。


母がリリティス様を助け出すような手がかりを持っていないかと思ったけど、空振りに終わった。



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