【盲目の天使】番外編
ちっと舌打ちして、ライトは家から出て行った。
ルシルはまたしても、申し訳なさそうに、ごめんね、を繰り返した。
けど、俺は、本当に嬉しかった。
こんなに大勢の家族がいっぺんにできるなんて、俺はすごく幸せものだ。
ふと、ノルバスにいる母を思い出す。
俺が、こうやって幸せでいることを、誰よりも喜んでくれるだろう。
もっとも、このままカナンにとどまるのか、放浪の旅へと出るのか、
カルレイン様たちの今後が決まらないうちは、余計な連絡を取るわけにもいかない。
いつか必ず、ルシルの素敵な家族と交流を持って、俺たちの子供を、母に抱かせてやりたいな。
「ねぇ、ルシル」
「なあに?」
「俺、一人っ子だから、子供はたくさんほしいな。ルシルの家みたいにさ」
俺がにっこり笑うと、ルシルは首まで真っ赤になって、小さく頷いた。
『俺が必ず守るから』
ルシルの頬に、そっと唇を寄せて、俺は耳元に囁いた。
そう、あのときの約束は永遠に有効だから。
俺は、この狭くて汚いぼろ家が、理想の我が家だって改めてそう思った。
<つづく>