ずっと傍に…
.



近づくにつれて、男の人の容姿がはっきりとしてくる。



「あの…」



沙江を抱き上げた男の人が振り向く。


鋭い、黒い瞳。


漆黒の髪。


…これは夢?



「っ…歳さん?」



優しく微笑む男の人が口を開く。



「今は、片桐 隼人【かたぎり はやと】だ」



片桐隼人…。



「言ったろ、信じろって…沙知」



涙で視界がぼやける。


歳さん…じゃなくて隼人さんが近づいてきて私の涙を拭う。



「相変わらず泣き虫」



くすっと笑われて。


沙江を抱いたまま抱き締められた。



「俺の家近くにあるんだけど来るか?」



問われて私はすぐに頷いた。


人見知りする沙江が寝ちゃったし、何より隼人さんをもっと知りたい。



「念のためだが、この子は俺の子だよな?」



公園を出て歩いていると隼人さんがちょっと躊躇いがちに尋ねてきた。



「当たり前ですっ。私だって逢えるって信じて待ってたんですよ」



「うん。…沙知に似てるからすぐにわかった」



照れ臭そうに笑う隼人さんが愛しくてまた涙が零れそうになった。



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