分校物語 ~夏~
「永岡先生は、今年から教員になって初めて担任を任せられているため、本来でしたら、キャリアを積んだ先生が立ち会いのもと面談をすることになっています」

「・・・」 
清貴は上田の顔をじっと見つめていた。

「ただ、その日に限っては、私も野村先生も本校に行くため、永岡先生の父兄面談が立ち会えないものですから。どうしても、お願いしたいんです」

「でも、僕は代行教員ですけど」

「あくまでも、永岡先生が父兄との話をしてもらって、何か、永岡先生が困った時に、父兄の意見を聞いてあげて下さい」

「永岡先生は、それでいいんですか? 」
清貴が永岡に尋ねた。
 
「私からもお願いします」
永岡が自信なさそうな表情で答えた。
その表情を見て、
「わかりました」
清貴は答えた。

「じゃ、お願いします。但し、ひと言、忠告しておきますが、自分の意見を父兄に押しつけたりしないで下さい」

上田が強調するように言った。

「えっ! 」
清貴が不思議な顔つきで言った。
 
「もし、父兄から何か複雑な相談など受けたら、即答や自分の意見などは言わず、後で私に相談して、後日答えるようにして下さい。いいですね」
 
「はい、わかりました」
永岡は素直に答えた。

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