分校物語 ~夏~
「お母さんは、その人と本気で結婚して生活してゆこうという気持ちがあるなら、時間をかけてでもいいから、もっと慎吾君と話し合うべきです」
清貴があっさりと答えた。

「慎吾君もお母さんの気持ちは、わかっていると思います。ただ、なんて言うか・・・しばらくお母さんと離れて暮らしていたから、お母さんの愛情を独占したいんでしょう。だから、すねているのかもしれません」

「・・・」
「・・・」

「今度、それとなく自分が、慎吾君の本当の気持ちを聞いてみたいと思います。結婚に賛成なのか反対なのか、どうかを? 」

「えっ! 」
永岡が清貴の対応に驚いた表情になった。

「でも、お母さん。これだけは約束して下さい。これからは、一日一回は電話でもメールでもかまいません、慎吾君と話しをしてやって下さい。慎吾君には、親の愛情を感じることが大事だと思います。お願いします」

清貴は頼むようにして言った後、母親に頭を下げた。

「いえ、こちらこそ・・・」
母親もその姿を見て頭を下げた。

永岡は清貴の行動に驚くばかりで言葉が出なかった。

転校の話しは保留することに決まった。
 
面談が終わった。
永岡は、清貴がやっかいなことを約束したことに不安になった。
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