分校物語 ~夏~
「松山先輩から教えてもらいました。あなたの恩師であり、この分校を薦めてくれた松山教育長は、私の大学時代の先輩になるわけです」

「そうだったんですか」

「正直なところ半信半疑でした。あなたのような方が分校の代行教員で来てくれるのかが・・・」

山城は、松山から清貴を分校の代行教員で雇ってもらえないかと相談を受けた。
その時、清貴の職歴を聞いていた。

どうして、エリートサラリーマンだった清貴が、代行教員の仕事をするようになったのかが不思議に思えた。

「自分という人間が怖くなったんです。だから・・・会社を辞めたんです」

「怖くなった・・・? 」

清貴の言葉に山城は興味深い顔で尋ねた。

「毎日、平気な顔して簡単に人を解雇していました。それが、会社のためになることなんだと思っていました。でも・・・」

清貴が、何かを思い出したように話すのをやめた。

「でも、どうしたんですか? 」
山城が気になって尋ねた。

「でも、ある男性社員を解雇した時、その社員には子供さんがいました」
 
清貴の脳裏に二年前の夏の日が浮かんだ。

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