分校物語 ~夏~
清貴が分校に赴任して三ヶ月が過ぎた。

分校は、全校児童数十二人の学校で三学級、教職員三人、代行教員一人、用務員一人の小学校だった。

小学校は島の山手にある。
周りは緑の山々に囲まれていて、運動場からは辺り一面に海が見える。

来年の春には廃校になる。
この一年間は教職員達も授業以外に、本校との会議に出席することが多く、受け持ちのクラスを空けることが多い。
そのため清貴は、毎日、どのクラスかを受け持っている。

清貴は、会社員で働いていた頃よりも充実していた。
慌ただしい都会での仕事は息苦しくなることがあったが、ここではそんなことはない。

自然に囲まれている環境は、清貴の心を穏やかにさせてくれる。
教室で生徒と過ごす時間は充実感があった。
何かを教えているという実感がなく、生徒達と一緒に何かをやっているという感じがするからだ。
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