神様の飼い猫
 神様は泣きじゃくる空を見て神様は何も言わず空の前から消えた。するりと。
「まさに神業。」
 泣きながら神様にツッコミを入れた。絶妙なツッコミだと思ったものの、笑いは起こら なかった。この雲たちは笑ってくれただろうか。こんなに悲しいときにこんなことを言 える自分にちょっと元気をもらった。空は、人を笑わせることが好きだった。
 少し元気になりつつ、空は、それでもまだ涙を流し続けて、眠りについた。
 夢を見た。自分が死ぬ夢。私は、いつも会社は車通勤している。私の運転はちょっと危 なっかしい。親や友達によく言われるが自分でも否定できない。だから、私が死ぬとし たら交通事故だろうと思っていた。しかし、交通事故ではなかった。その日、空はいつ ものように会社の駐車場に車を止めた。田舎の駐車場は無駄に広い。駐車場から会社ま で随分距離があった。まだ朝だというのに、八月の暑い日差しが全身に突き刺さる。
 いつもなら同期の有樹ちゃんと沙耶ちゃんと一緒に会社まで歩くのだが、今日はどうし てもトイレが我慢できなくて二人より先に会社に向かってしまった。それが命とりだっ た。二人が来るまで車で待機していれば良かったのだ。トイレなんて我慢して。
「待って、戻ってきて!」
 空は、夢の中で夢の中の自分に必死で叫んだ。しかし、声は届かなかった。
 夢の中の空は歩き続ける。早足で。
 そして、その瞬間は訪れた。
 隕石が私の頭を直撃した、実にタイミングよく。空が倒れ、隕石が地面に当たって砕け る様子がスローモーションで再生され続けた。
「そう、隕石。隕石が当たって死んだんだ。」
 夢の中の空は呟く。訳の分からない茶色い塊に命を奪われたなんて、後悔のしようがな いじゃないか。とんだ笑い話だ。
 海野 空、23歳、天国へ旅立つ。
 
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