君へのラブソング
「…中本さん、こんなときに言うのもなんですが…一週間以内に区役所に死産届けを提出してくださいね。あとこの書類も。お願いします。」
看護士さんが優しく、そんな惨いことを言う。
「…はい…。」
ふらつく足で、病院を後にした。
悲しく光る、左手の薬指の指輪。あたしは俗に言うできちゃった婚をするはずだった。
もう、彼とあたしを繋ぐ天使はいない。それでも、結婚してくれる…?
「…もしもし、美奈。」
この事実を、彼に伝える為に電話を掛ける。
『美奈、赤ちゃん元気か?』
機械越しに聞こえる、明るい声に、胸が締め付けられる。
返事をしない、あたしにどうした?と優しく尋ねるその声に、耐えてた涙が溢れ出た。
『美奈!?どうした?』
「ごっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
壊れたCDのように謝罪を繰り越すあたし。
彼は、不幸を察したのか、穏やかな、本当に穏やかな声で言った。
「そっか…謝んないでいいんだよ。君のせいじゃない。」
だけど、あたしの涙はとめどなく流れる。