うちのおネコ様

(3)楽しい夏休み計画

ぜえっ はあっ ぜえええっ  はあっ・・・

確かに10分でついた学校なのだが、なぜかいつもより疲れた気がする。
それはきっと朝の母との会話のやりとりにのせいに違いない。
「1ヶ月も、一人なんて・・・」

普通の高校生なら、
「やった!一人暮らしみたいに満喫できる!」とか、
「やった!親に内緒で、夜遊びできる!」とか、言って喜ぶところだ。

しかし美子にはそんな喜びはなかった。
美子はどちらかというと、女の子というよりはむしろ男の子とまじって
外で遊んでいた子供だった。
野球、サッカー、水泳、ドッジボール・・・なんでも進んで動き回った。
中学に入ると友達に進められるまま、バスケ部に入部した。
ミニバスをやっていた周りに比べると多少最初は遅れをとっていたが、
卒業する頃には副キャプテンになるほどだった。
(といっても、3年の部員が3人と少なかった為。)

だから炊事、洗濯はおろか、家庭科の授業の裁縫だってお世辞にも
「縫い目がきれいね」なんていわれるものを作ったこともなかった。

おまけに、彼氏なんて呼べる人は16年間いた事がない。
好きな人っていったって、中学2年の時に恋した他校のバスケ部の先輩位。
恋愛という恋愛もしたことがない。

いや、したくないわけじゃない。わけじゃないんだが・・・
機会が無いんだ。うん。みんな私のこと知らないだけなんだ。


そう言い聞かせながら、通い初めて3ヶ月がたち、やっと少しなじんできた
教室に入った。


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