Turquoise Blue Ⅲ 〜好きな人の名前〜
…なんか…
ちょっとは…いい人なのかな…
中に入って、フロア
でもなんか少し 薄暗い
そこにある売店には、チラシの棚と
壁にはやっぱり
聞いたコトのない題名の
映画や演劇のポスターが貼られてる
売店で
パンフレットみたいのを
一冊買ったヴォーカルは
人の列の後ろに着いて
なんか”早く来い”って感じで
こっちに手を振って来たから
私も慌てて、そこに走った
「小さいね…」
ザワザワする座席、照明 ―――
一番前に、スクリーンはあるけど
なんか広さは、ライヴハウスとか
うちの大学の講義室とかと
あまり変わらない感じ…
「ミニシアターだし
普段はあのスクリーンの舞台で
劇団が、演劇もやるよ」
「――― 来たの初めて…」
「劇団やお笑いやってる奴らって
バンドもやってたりして、結構絡むし
それで知ってからは 俺は、たまにね」
「…そうなんだ」
ヴォーカルは、一番後ろ
っていっても狭いし
スクリーンがよく見える真ん中に座って
私が上着、脱ぐ時とかも
ちょっと荷物持ったり、手伝ってくれた…
「――― でも、珍しいな」
「え」
「さっき、ふつーさ
”アタシ奢られて当然〜”なのにさ
俺好きだよ?そういうコ」
「…なっ…!べ、別にっ!」
「前カレの〜
教育が良かったんだね
――― ”灰谷”のさ」
「―――…っ」
…い
…イイヤツかもしれないって
思ったとたんにこれだよ…!!
「あ、始まるぞ」
ブザーが鳴って
天井からの、照明が消えた ―――