感方恋薬-知られざる月の館-

2) あの人は?――

「いやいや、すまぬすまぬ」


爺は自分の顔の前で右手をひらひらさせて自分は笑ってはいないという仕草をするのだ
が、どう見ても、面白がっているとしか思えない。


長い白髪に負けない位、長い白い髭。


白装束に身を固め、自称、あたしの先祖だと言うこの爺は、あたしの呪術や薬作りの師範である。


昼間やっていたタロット占いも、この爺に教わった技である。


純和風のこの爺がどうしてタロット占いなのかは不明であるが、爺が知っていたのは曲げる事の無い事実で有って、仕方が無い事だ。
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