感方恋薬-知られざる月の館-
その心情を読み取ったのか幸はあたしの顔を見てから、ひとつ咳払いをして明後日の方向に視線をやった。こら、幸、誤魔化すんじゃぁない!


「でも、幸、行動してみないと何ともならないんじゃぁ無い?」


―――幸、再び考え込む。


「そうですね、虎穴に入らんば何とかって言うことわざも有りますからね。行ってみましょうか」


幸は何かがふっきれたらしいが今度はあたしが疑心暗鬼に陥った。


あたしはじっと幸を見る。


「貴子さん、だいじょーぶです。ちゃんと骨は拾わせて貰いますから」


幸はにっこり笑ってそうあたしに告げた。あたしは幸のおでこをパーでぴしっと叩いてみる。

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