僕のお姉ちゃん
「桜野の続き、聞きたかったな」



姉貴の呑気な言葉に、無性にイラつく。



「ねぇ悠、イギリスのお土産、買ってきたのよ。とっても美味しい紅茶なの。せっかくだから、お友達にもあげたかったな……。どうして帰しちゃったの?」


姉貴のせいだよ


そう言ってやりたかったけど、動揺のせいで、口が動かない。



とにかく、部屋に行こう。まずは、1人になって落ち着こう。


隣で首をかしげながら微笑んでいる姉貴を無視して、足を動かした。

その時


「……久しぶりなのに、冷たいじゃない」


ぐっと腕を引っ張られて、気が付けば、姉貴に抱きしめられていた。



体が一瞬にして硬くなった。

自然と恐怖を思い出して、目が潤む。



やっぱり俺は、「僕」のままで

姉貴は……「お姉ちゃん」のままなんだ。



「まだ、幼さが残ってて良かった。私、男らしい悠より可愛い悠の方が好き、大好き」



可愛くなんかない、そう言い返したいのに、できない。


もっと、男らしくなればよかった。

168cmの姉貴の身長を、抜かすことができていたら……



この状況を、抜け出すことができたかもしれない。
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