【短編】お願い、ヴァンパイア様
神崎さんの含みを持たせた言い方に、わたしは首をかしげた。
そして今までみたことのない柔らかい微笑みで、神崎さんの白い手がわたしの顔の前まで伸びる。
「これは?」
小さな手のひらサイズの巾着。
和柄の古風なかんじが、彼女のイメージとはかけ離れていた。
「あくまで補助剤。そう何度も、あなたを抱えて保健室にはいけない」
それだけを残して、神崎さんは席に戻っていってしまった。
あのくちぶりからすると、わたしが倒れたときは神崎さんが連れて行ってくれたみたいだ。
会話が終わると、こそこそと二人は顔を近づけてくる。
「神崎さんと仲いいねぇ?」
「椎名、なにそれ?」
ここぞとばかりに聞いてくる。
確かにあまり人と接点を持たなかった転校生が、いきなりわたしの面倒を見てくれて、よくわからないプレゼントまで。
…でも、二人にはまだ話せない。
わたしの気持ちにケリがつくまでは…。
「えへへ~、ちょっとね」
と、乾いた笑いで誤魔化してみた。
巾着の口を開くと、そこには錠剤が何粒か入っていた。
補助剤、といっていたから、レンの吸血対策なのだろう。
「……ありがと、神崎さん」
きれいな髪を初夏の湿った風に揺らす彼女の後姿に、わたしはそっと呟いた。
そして今までみたことのない柔らかい微笑みで、神崎さんの白い手がわたしの顔の前まで伸びる。
「これは?」
小さな手のひらサイズの巾着。
和柄の古風なかんじが、彼女のイメージとはかけ離れていた。
「あくまで補助剤。そう何度も、あなたを抱えて保健室にはいけない」
それだけを残して、神崎さんは席に戻っていってしまった。
あのくちぶりからすると、わたしが倒れたときは神崎さんが連れて行ってくれたみたいだ。
会話が終わると、こそこそと二人は顔を近づけてくる。
「神崎さんと仲いいねぇ?」
「椎名、なにそれ?」
ここぞとばかりに聞いてくる。
確かにあまり人と接点を持たなかった転校生が、いきなりわたしの面倒を見てくれて、よくわからないプレゼントまで。
…でも、二人にはまだ話せない。
わたしの気持ちにケリがつくまでは…。
「えへへ~、ちょっとね」
と、乾いた笑いで誤魔化してみた。
巾着の口を開くと、そこには錠剤が何粒か入っていた。
補助剤、といっていたから、レンの吸血対策なのだろう。
「……ありがと、神崎さん」
きれいな髪を初夏の湿った風に揺らす彼女の後姿に、わたしはそっと呟いた。