【短編】お願い、ヴァンパイア様
 翌日の通学は、驚くほど身体が軽かった。


 あのあと、話が終わるとレンはすぐどこかへ消えてしまった。

わたしが犯したおまじないは、誰かを犠牲にした上に立つ『幸せ』なのだ。


 でもそれは、本当の『幸せ』なの?


 教室へつくやいなや、百合と愛美はわたしの席まで駆け寄って来た。


「バカ椎名!心配かけて…っ」

「椎名ちゃん、もう大丈夫?」


 不安そうに見つめる二人に、わたしが本当に周りから支えられているのだと痛感せずにはいられない。

「うん、もう平気だよ!」

 久々に嬉しさだけの笑顔だった。


「椎名さん」

 そこにやってきたのは、二人と同じくらい心配をかけた神崎さんだ。

「か、神崎さん…っ」

 慌てて席を立とうとすると、「座ってていい」といいたげに色素の薄い長い髪を揺らす。


「もう、私にはなにもできない」

 小さく呟く。

それはなんとなく、わかっていた。


「……心配かけて、ごめんなさい」

 ちょこんと謝る。

きっと百合と愛美はキョトンとしていることだろうけど、今はそれどころじゃない。


「活かすも殺すも、全てはあなたの『選択』。……だけど、見せられたものが全てじゃない」


「え……?」


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