【短編】お願い、ヴァンパイア様
「…なに、いってんだよ」

「わたしがいるよ!」


 ぎゅっとレンの大きな手を握り締め、わたしは戸惑いに揺れる太陽みたいな瞳を覗き込んだ。

後押ししてくれるみたいに、潮風はすーっと吹き続ける。



「わたしが、レンの側にいる!……だから…っ」


 言いかけたときだった。

きっと鋭い視線でわたしを睨みつけてきたレン。


「いい加減なことを言うな!」


 思わず肩が震えた。

怒りに満ちたレンの表情に、声を失ってしまった。


「なにがわかる?お前だって、自分の『欲』のために俺を呼んだくせに!」

「………っ!!」


 レンの言うとおりだ。

今こうしてここにいるのは、わたしの『欲望』とレンの『命』のため。


 でも、レンがあまりにも悲しい瞳をするから―……。



 みたことのない様子に、わたしは更に涙の嵩が増えた。

けれど、それはさっきまでの想いじゃない。


 何も出来ない自分への不甲斐なさ。



「俺のことなんか放っておいて、さっさとお前は『名前』を言えばいいんだよ!」


 ただレンを見つめるだけのわたしの手を、ブンと投げつけるように放す。

そして、そのままいらだった様子でくるりと背を向けた。


大きな背中は、小さく震えていた。


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