【短編】お願い、ヴァンパイア様
「早く……『名前』を、いえよ…っ!」


 搾り出すようなかすれた声。


 わたしはレンの想いを一つも受け止めれないの?



「……ん…」


 わたしがなにか呟いたのがレンの耳にも届いたのか。

後ろにいるわたしに、夜すら憎むような視線を向けてくる。


 鋭い紅い瞳。

でもわたしは、不思議と怖くなかった。


「そうだよ、最初からそうして『名前』を言えば……!」


「…『レン』よ」


 強がるレンの言葉をぴしゃりと遮る。


「レンの『心』がほしい」

 ぶつかり合う視線に負けないようにそういうと、レンはピタリと根が張ったように固まる。

一際大きく見開いた真紅の瞳は、驚きを隠せていなかった。


「なに、いってんだよ……」


 わたしは、今になってわかった。


 確かに魔術書にお願いしたのは、翔くんがすきだったから。

憧れた彼の隣にいたくて……。


 でも、今わたしが一緒にいたいと思うのは、彼じゃない。



 彼にはわたしがいなくても、周りにたくさん女の子がいる。

けれど、レンは―……?


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