満月の銀色ススキ
残されたススキは、小さく息を吐いた。

再び腰を下ろす。
ゴツリと幹に頭をぶつける。


「どれだけ期待してるんだよ、俺…」


ススキは呟く。
そして自嘲した。

ずっと近くに居る訳ではない。
話しでは、望月がここに来れるのは残り四日ほどだ。

また、望月には家族もある。
個人の用事もあるだろう。

だが、何処かでまた来てくれると期待している自分がいる。


“あまり情をかけ過ぎるなよ?”


九重の言葉が脳裏をよぎる。

初めは自分のことを棚に上げて何の忠告だろうと思った。
だが、こうしてみれば九重なりの助言だったのかもしれない。


「もう、手遅れっぽいな…」


橙と藍が混ざった空を見詰めた。

八月はもう半ば。
夏もそろそろ終わる。

終わってしまう。
< 41 / 72 >

この作品をシェア

pagetop