満月の銀色ススキ
時間は随分と過ぎていた。

もうすぐ、夕刻。
だが、望月の姿はない。

何事かと、ススキは訝った。

望月と会って五日。
その間、彼女が顔を見せなかったことなどない。


「あの娘、まだ来ないのか」


不安が胸を過ぎったとき。
そんな声が響いた。

反射的に顔を上げると、九重の姿があった。


「…どういうことだ」


眉を歪めたススキに、九重は口を閉じる。

暫くの沈黙。
そして頭を掻きながら答えた。


「番人の奴が少し、な」


「番人?」


「俺はアイツを追って来たんだが、隠れるのが上手くて見失った」


ふう、と息を吐いて。
九重は首をこきりと鳴らした。

のんびりとしたその様子に、ススキは苛立ちに襲われる。


「それが望月に何の関係がある?」


「…なんだ。おまえ、まだ気付いてなかったのか」


捲くし立てるように言ったススキに。
九重は目を丸くした。

そして、静かに口を開く。


「おまえが熱を入れている娘はなぁ―…」


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