謝罪人 Kyouko
二人にとって、今日は慌ただしい日である。
ゆっくり話をする時間などはないと感じた。

「会見の時間まで、これを読んでおいて下さい」
恭子は、あらかじめ用意していた会見用のレポート用紙を二人に手渡した。

二人は、レポート用紙を手にして客室を出て行った。


それから、二人は客室に戻ってくることはなかった。

会見の時間まで十五分前になる。

恭子はタバコを取り出した。
緊張感が体じゅうに張りつめる感じがする。
タバコを吸って落ち着かせよう。

タバコを吸うと、心に暗示がかかるような気がする。
何か自信が持てる。
 
客室をノックする音がした。

「お待たせしました。時間です」
中居が恭子を迎えきた。

恭子は、吸いかけのタバコを灰皿にもみ消した。

心の中で「よっしゃ!」と叫んで、気を引きしめた。


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