謝罪人 Kyouko
恭子は扉の横に立った。
会場には緊張した空気がただよっている。

記者席の中に松山の姿を見つけた。
松山と目が合う。
松山は、唖然とした表情だった。
「どうして、いるんだ?」と言わんばかりに恭子を見ていた。

島田と中居は、記者席の横を通り、中央に用意されたテーブル席に進んだ。

島田はテーブル席の前に立つ。
中居は、その後ろに立つ。

恭子は、ドアの横から離れなかった。
この位置からだと、会場全体が見渡せたからだ。

松山の横顔もよく見れる。
再び松山と目があった。
だが、今度は恭子を無視するように目をそらした。


島田は、市民に疑惑や不安を招いたことへの謝罪を述べて深く頭を下げた。
そして、市長の辞意を表明した。

島田が、ひとりテーブル席に座った。
中居は、その後ろで立ったまま市長を見守っている。

恭子の思惑どおりの展開だった。








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