謝罪人 Kyouko
記者会見が始まった。

記者達は、賄賂疑惑の問い質しに集中した。
始めは優しい口調で丁寧に取材をしていた。

しかし、ひとりの若い記者が、
「辞意を表明することで、あなたが賄賂疑惑をもみ消しているという市民もいます。そのことについて、どう考えていますか? 」

批判的な質問をした。

島田は、そのコメントに困って言葉が出なかった。
すると、他の記者達も同調するように島田にコメントを求めた。
それは罵声的に聞こえてくるぐらい、相手の弱い部分を責めるようにも思えた。


その状況を見た恭子は、報道の権利を楯(たて)にした悪魔のように思えた。

確かに島田は、疑わしいことをやっているかもしれない。
しかし、この場では、ひとりの人間をいたぶっているしか思えてこなかった。

恭子は、松山のことが気になった。
松山は、騒ぎたてる記者達の中、ひとり静かにしている。
どこか不気味に見えた。

ひょっとしたら、市職員の疑惑のことを問い詰めるつもりかも・・・?
そう考えて、初めて気付いた。












< 107 / 138 >

この作品をシェア

pagetop