もしも僕に。


榎月の歩く速さはいつもより全然速くて怒ってるのが丸分かりだ。

おいていかれちゃう…。

もう、なんか、泣きたくなる…。


「…………」


榎月の足はピタッと止まったかと思えば私の方へ向かってくる。

「………?」

私は不思議そうに榎月を見上げた。

「悪い…大人気なかった…」

「榎月は悪くないよ、ごめんね」


「ん…」


榎月はそれ以上何も言わなかった。

その代わりゆっくり歩いていた。



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