【完】ひとつ屋根の下で。
車のウィンドウを開くと、風が生暖かい。



「苺、冷気が逃げる。やめて」



「いいじゃん、冷えたんだよ。暑がりヒカル」



流れる音楽、入り込む生暖かな風。



目に映る景色は、確かに優しい木々の色。



砂利の敷いてある小さなスペースを見つけ、そこに、ヒカルが車をくるりと止める。



アタシはウインドウを閉めて、シートベルトを外した。



ヒカルは何度も深呼吸をしているが、ハンドルを強く握って離さない。



「ヒカル、大丈夫?」



「ゴメン。もうちょっとだけ待って」



やっぱり、普通にはしてたけど、ヒカルにはまだ恐怖心が消えてない。



アタシはギアを握った左手に手を重ねて、ギュッと握った。



アタシが、一緒にいる。ヒカルの心はアタシが守る。
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