【完】ひとつ屋根の下で。
………………ドスッ!
「……ったあ」
鈍い音と共に、ヒカルの小さな悲鳴が聞こえる。
アタシから離れたヒカルは足を摩っている。どうやら、膝に置いてた洋書が足に落ちたらしい。
「痛いなぁ……もうこの本、二度と読まない。ムカつく」
ぶつくさ文句をたれてる姿に、心の中で『ガキ』と呟く。
さっきまで響いてた秒針の音も、アタシの心臓の音も、もう響かない。平常運転。
時計を見ると時間が迫ってた。
「あ、アタシ仕事行く準備しないと」
「俺も、今日は朝から講義だ」
ヒカルも思い出したように言い、アタシ達は自然と身体を離し、二人同時に立ち上がり各々の部屋へ引っ込む。
入った瞬間、さっきのことを思い出した。
さっき、本が落ちてなかったらアタシ達、キス、してたかも……。