嘘で隠された現実(リアル)
バンド用のギターとは違う、柔らかい音色が響く。

私はその音色に耳をすませながら、軽く身体を揺らしてリズムを取る。

気付けば、徹夜で考えた歌詞を歌っていた。


「歌詞、できてんじゃねぇか」


曲が終わり、余韻に浸っていたところで、朱月のそんな言葉が聞こえた。


「え?ああ…」

気まずかったわけではないのだが、私は朱月の視線から逃げるように窓の外に目を向けた。

「一応はね‥でも、納得いかなくて…」


「何で?」


「何でだろ…?」


「…」


笑うだろうと思っていたのに、朱月は何も言わなかった。

珍しく真面目な顔をしているのが、視界の隅に映った気がした。
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