嘘で隠された現実(リアル)
「聴いているのか?」


怒っているような、少し大きな声にハッとした。

慌てて神楽に目を向ければ、案の定、彼女は俺を睨んでいた。


「悪ぃ。ちょっと考え事してた」


謝っても、許してくれる気がないらしい。

神楽は俺を無視してグラスに口付け、飲み物を口に運んだ。


大抵の人間なら、俺の発言に対して「考え事?」といった質問を返してくるのだろうが、神楽は全く興味なし、といった様子だった。

実際、俺に関することに興味などあるはずがない。

神楽の関心事は、常に天音。

良い意味でも、悪い意味でも、神楽に影響を与えるのは天音くらいだ。


「私は柳のことなどどうでもいいし、興味もない」


「判ってるって」

次に続く言葉が予測できたので、俺は思わずため息を付いた。

「天音が心配してるからだろ?マジでお前は、全てが天音中心だな」


「五月蝿い」


「ま、そんなこと、俺にはどーでもいいけどな」


「心配させていることが判っているなら、何故何もしない?」


「誰にでも、言いたくないことくらいあんだろ。神楽に何言われても、俺は天音に話す気なんかねぇよ」


「そんなことは、言っていない」


神楽は、人差し指で机を繰り返し叩いた。

その様子から、神楽がイラついていることが判る。
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