嘘で隠された現実(リアル)
エレベーターに乗り込み、8階へと向かう。

目的の階に着くと、俺達は素早くエレベーターを降りた。


それから暫く歩くと、ある個室の少し手前で、立花さんは足を止めた。

そして勢いよく俺を振り返り、囁くように話し掛けてきた。


「もう一度言うけど、絶対に声は出さないでよ?これは、貴方のためでもあるんだから」


「‥判ったよ」


納得できないながらも、俺は仕方なく頷いた。

立花さんは不安だと言いたげな表情を見せていたが、それでも多少は安堵したようにため息を付いた。


「じゃ、行くわよ」

そう言って、立花さんはドアの取っ手に手を置いた。


「ノックもなし‥ってことは、郷花だね」


「あら、なんだか失礼な判断の仕方ね」


「だって、本当のことだし」


そういうことか…。

ドアが開いた瞬間、俺は先程の立花さんの言動を理解することができた。
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