嘘で隠された現実(リアル)
「えっ?ちょっと待ってよ、星!」


「こんにちはーって‥あれ?皆さんどうしたんです…?」


冗談ではなく本当にドアに向かいだした星を呼び止めようとしたとき、絶妙のタイミングでドアが開いた。

ドアを開けて部屋に入ろうとしていた響は、注目されていることに気付き、困惑気味に笑みを浮かべた。


「響か‥お前遅ぇよ。待ちくたびれたぜ」

朱月はそう言って、何故かホッとしたように息を吐いた。


「すみません。ちょっと総務の仕事があって‥って、どうしたんです?何だか空気重くありません?」


「そうか?」


「また姉さんが、何かやらかしちゃいました?」

響は今にもため息をつきそうな表情で、私に視線を遣してきた。


「ちょっと、響!またって何よ?」


「‥で、本当に何かあったんですか?」


怒っている私を、いっそ心地良いくらいに無視してくれた響は真剣な表情で、頬杖をついている朱月に視線を移した。


「いや?ただ待ちくたびれてただけ」


「そ、それは‥すみません」


「ははっ、冗談だって」

朱月は申し訳なさそうに謝る響を笑い、勢いよく立ち上がった。

「そんじゃ、練習すっか!神楽も文句ねぇだろ?」


「仕方ないわね。まぁせっかく天音が歌詞書いたんだし、私も歌いたいかな」


星は一度抱えた荷物を再び降ろした。

それだけで、星がやる気になったということが判る。

私は嬉しくなって、思わず朱月に目を向けた。

何を言ったわけでもないのに、朱月は私と目が合うと、笑顔で大きく頷いた。
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