嘘で隠された現実(リアル)
「‥もしそれで俺が死んだら、火月は一生俺に捕らわれるだろう?たとえ死ななくても、火月は自分を責めるだろうから‥俺ではなく、自分を責めるだろうから…」


俺は泣きそうになって、強く唇を噛み締めた。


「その事件以来、火月は変わったよ。俺に裏切られたことが、許せなかったんだろうね。火月の態度には、両親でさえ、どこか恐怖を感じているようだった。その現実は、俺には好都合だったよ。俺がここに居続けるためには、優秀でいるだけじゃ駄目だ‥火月をどうにかしなければ‥そう思っていたからね。それほどせずに、火月を育てることに自信をなくした両親は、火月を手放した。正直俺は、ここまで大きな話になると思っていなかった。でも‥これでもう火月の存在に怯えなくて済むと思うと、凄く安心した…」


「ねぇ、手術を受けないのは‥その罪悪感からだって言うの?」


水月は、ゆっくりとした動作で立花さんへと顔を向けた。
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