嘘で隠された現実(リアル)
「俺は約10年、火月への罪悪感を抱えて生きてきた。火月が居なくなって、もう火月の存在に怯えなくて済むと安心したはずなのに、それからの生活は、息をすることさえも苦しかったんだ。両親に褒められるたび、笑顔を向けられるたび、俺は火月のことを考えた。火月の誕生日を普段通りに過ごす両親の姿には、殺意さえ抱いた。俺にはそんな感情を持つ資格さえないのに‥笑えるだろ?でも、この病気が判ったとき、俺はやっと解放されると思った。結局、俺は逃げたいんだよ。卑怯だけど、それでもいい。もう、終らせたい」
「水月…」
「郷花ももう判ってると思うけど、俺が今になって火月に逢いに行ったのは…」
「嫌われるため‥いえ、恨まれるためよね。自分が死んでしまうことで、弟が一生自分に捕らわれたりしないため‥でしょう?でも、これ以上なんて、必要ないんじゃないの?今更恨まれなくても、既に充分…」
「駄目だよ。火月は優しいから…」
そう言って、水月は悲しそうに笑った。
「水月…」
「郷花ももう判ってると思うけど、俺が今になって火月に逢いに行ったのは…」
「嫌われるため‥いえ、恨まれるためよね。自分が死んでしまうことで、弟が一生自分に捕らわれたりしないため‥でしょう?でも、これ以上なんて、必要ないんじゃないの?今更恨まれなくても、既に充分…」
「駄目だよ。火月は優しいから…」
そう言って、水月は悲しそうに笑った。