嘘で隠された現実(リアル)
「黒雨さん、餞別代わりのお願い‥聴いてもらえますか?」


「何だ?」


「明日の夜7時からのライブで、俺、皆と最後のステージに立つんです。飛び入り参加で最後の演奏だから2曲させてもらえるか判んないんですけど、聴きに来てもらえませんか?」


「俺が?」


「はい」

俺は大きく頷いた。


「けどなぁ‥俺、星ちゃんに見つかったらまずいんだよ。ほら、俺は素の星ちゃんは見たことないだろ?」


「駄目ですか…?」


黒雨さんなら即答してくれると思ったので、かなりショックを受けている。

黒雨さんに迷惑を掛けたくはないのだが、それでもやはり、最後の演奏を聴いてほしいと願ってしまう。


「そんな顔すんなよ」

俯きかけた俺の頭に、黒雨さんは優しく手を置いた。

「行くよ。お前が俺を見つけられるかは判んねぇが、ちゃんと行く」


「ほ、ホントですかっ!?」


嬉しくて、思わず身を乗り出してしまう。

そんな姿を笑われて、俺は顔を熱くしながら姿勢を正した。
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