嘘で隠された現実(リアル)
「俺も行きますっ!」


突然、玉が大きな声をあげた。

玉の存在を忘れていたこともあって、俺は大げさなくらいに驚いてしまった。


「お前は駄目だ。絶対に星ちゃんにバレる」


「マスターだけずるいっ!俺も星ちゃんの歌ってるとこ見たいですぅ」


「駄目」


「マスターの馬鹿!朱月さんからも、言ってくださいよぉ」


「あーうん。ごめんな?」


「嘘ぉ?この流れでそれ!?」


今までの俺と黒雨さんの会話を聴いていたはずなのに、玉は先程と何も変わっていない。その様子は、本当に俺達の話を聴いていたのかと思わせるほどだ。


黒雨さんが言ったことは、嘘ではなかった。

黒雨さんが玉を気に入っている理由が、少し判ったような気がした。
< 281 / 331 >

この作品をシェア

pagetop