嘘で隠された現実(リアル)
寝転んでいたはずなのに、気付けば俺は、起き上がった状態でベッドに座り込んでいた。


流れていた曲は、確かに俺‥月が作った曲だった。

去年の天音の誕生日に、渡せないと判っていながらも作ってしまった曲。

そして、それに歌詞を付けたのは…。


「良い曲ですねぇ。歌詞も切ないけど、それだけじゃないって感じで」


「ありがとうございます。あ、この曲の歌詞を書いてくれたS.lieさんの手紙があるんですけど、読ませてもらってもいいですか?」


「あら。じゃぁせっかくだから、お願いしようかな」


「はい、では読みますね。『初めまして。この曲を聴いたとき、私は数年前のことを思い出さずにはいられませんでした。私は高校生のときにバンドの作詞をしていました。好きな人が曲を作っていて、だから歌詞を書いていたんだと思います。残念なことに、その恋は実りませんでした。現実を、真実を、嘘で隠してばかりの毎日だったけれど、もうそれをやめようと思います。辛いことがあったから、楽しいこともあったのだと、今ではそう思えます。私は今シアワセです。だから彼にも、シアワセであってほしいと思います。別々の場所で生きているけれど、一緒にシアワセになりたいと、今は心からそう思っています』」
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