嘘で隠された現実(リアル)
「あの頃が懐かしいよな」

朱月はカップの中身を一口飲んでから、本当に懐かしそうにそう呟いた。


「ねぇ‥初めて逢ったとき、あたしのことどう思った?」


この質問が、私の限界だった。

これ以上は訊けない。

でも、これは‥どうしても知りたい。


「印象ってことか?」

朱月は空を見たまま、言葉を続けた。

「そうだな、変わったヤツだって思った。近づくなオーラ出してたってのに、普通に話しかけてくんだからさ。けど‥あぁ、きっとコイツはまっすぐ育ってきたんだろうなって‥少し羨ましかった」


「まっすぐ…?何それ」


「俺はそう思ったんだよ」

そう言って、朱月は何故か辛そうに笑った。


「あたしは…」

私は少し間を置いて、小さく口を開いた。

「朱月を初めて見たとき、すごく寂しそうな子だと思った」


言い終えた瞬間、私と朱月の目が合った。

私の視界に映る朱月の目は、驚いたように見開かれていた。
< 63 / 331 >

この作品をシェア

pagetop