ビターに愛して シュガーな恋心
「愛子の家はもう…ホントに家名しかないような状態で…
華道の家元だったんだけど…門下生もいない、金もないって…
それで家を売って、高校も辞めて…今は一人でバイトしながら生活してるってさ
昨日、メールがきた」

「え? メール?」

「うん
愛子の両親って事故で亡くなってるんだ
祖母が今年の春に亡くなって…愛子はずっと広い屋敷に一人でいたんだ
まあ、何人か使用人みたいな人間はいたみたいだけどね
『これで本当に一人になっちゃった』だってさ」

藤城君が私の額にキスをした

「ごめん
愛子の気持ち、わからないわけじゃないから…
なんか…近くに居過ぎた分、兄妹って感じがしてさ
ああ見えても、愛子は俺と同じ年なんだ
すげえ苦労している分、大人びた顔つきだけど…まだ15歳なんだよね」

愛子さん…すごく大人だと思ってた

綺麗で、落ち着いて見えたから…でも私と同じ年なんだ

不思議

しかも一人暮らし

家族もいなくて、頼れる人もいない

結婚すると思っていた相手には振られて……

なんか…私、愛子さんに悪いことをした気分だよ
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