恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
そんなあたしを見つけるやいなや、チャキチャキの江戸っ子で、“超”がつくほど気が短いおにーちゃんは……、

「やい、ピンクっ、また寿司屋の“光ものブラザーズ”に泣かされたのかっ!? おにーちゃんがアイツらブッ飛ばしてやらぁ!!」

……なんて言って、握ったゲンコツにハァーッって息をかけてる。

「ちょ、ちょっと待ってよ、おにーちゃんっ」

そのキモチはうれしかったけど、さすがに年上のおにーちゃんに同級生の“光ものブラザーズ”こと金太&銀次を殴りに行かせるのはあんまりだと思って、今にも飛び出していこうとしているおにーちゃんのシャツのすそをつかんで、あたしは必死で引きとめた。

小っちゃい頃から、おにーちゃんはこうなんだ。あたしが誰かにいじめられたりすると、まるで正義のヒーローみたいにあたしのことを助けてくれるんだ。


とりあえず、あたしはその日、学校であったことをおにーちゃんに話して聞かせた。

「へぇ、そーいうことか。そんなら、あしたまでに逆上がりができるようになって、お前を笑ったヤツらを見返してやれ、ってんだ」

そう言って、近所の公園で、まずは鉄棒の握り方からはじめて、あたしに逆上がりの猛特訓してくれたおにーちゃん。


「ホラ、こーやんだよ」


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