恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
ふたりの意見は何十日経っても、まるで2本の平行線のように互いに交わり合うことはなかったんだけど、最終的には子供の幸せがイチバンだと考えたおやっさんの……、

「ヤル気のねぇヤツの焼いたせんぺいなんざ申し訳なくて、大事なお客さまのクチに入れるわけにはいかねぇ、ってんだっ!!」

……というひとことで、おにーちゃんの体育大学への進学が決まった。

つまり、おやっさんのほうが折れたってことだ。


そんなおにーちゃんが母校で教育実習をするために3年ぶりで浅草の町に帰ってきたとあっちゃあ、あたしのテンションだっていやがうえにも上がっちゃう♪


……とはいっても、おにーちゃんが担当するのは“男子の体育”。だから、直接顔を合わせる機会は実質的にはないと思う。

それでも、学校という広いようで狭い限定的な空間の中でなら、いつどこで出会ったって、それは全然不思議なことじゃない。

そう思うと胸のドキドキが押さえきれない。

そして……、

“もし階段の踊り場とかで、偶然バッタリおにーちゃんに会ったりしたら、あたし、どんなリアクションとろっかな~?”

……なんて妄想が、浮かんできては止まらない、それが今朝のあたしだった――――
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