恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
おにーちゃんと浴衣姿のやまぶきさんとのツーショットで、おにーちゃんは左手にほおずきを、そして右手にはやまびきさんの左手を握っていた。

おにーちゃんがシフト上、今日はお休みなのは知ってたけど、まさかこんな場面を目撃することになるとは思ってなかった。

あたしは気づかないフリして、そのまま通り過ぎようと決めた。


だけど……、

「よぉ、ピンク、いまバイトの帰りか?」

……なんて気楽な感じで声かけてくるおにーちゃん。

「み、見りゃ、分かるでしょ、見りゃあ」

内心、激しく動揺しつつも、わざとぶっきらぼうな感じで答えるあたし。


「桃ちゃん、おかえりなさい」


やまぶきさんは品のある感じの笑顔でそう言ってくるんだけど、あたしはぶっちょうづらで愛想もなく「ただいま」と答えた。

「おいおい、結婚したらお隣さん同士になるってぇのに、なんて言い草してんだよ」

たしかにやまぶきさんがおにーちゃんの花嫁になれば、彼女とだってお隣さん同士の関係になってしまう。

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