恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~


      ×      ×      ×



放課後、帰り支度を整えたあたしは職員室へと向かって歩いていた。

別に職員室じたいに用事があるってわけじゃない。

職員室に向かって歩いてれば、もしかしたらおにーちゃんに出くわすかもしれないっていう淡い期待を胸に抱いていたからだ。


ほどなく……、


まんまと期待どおりに、職員室のある本校舎と、2年3組のある新校舎とをつなぐ渡り廊下の向こうに、赤いジャージ姿のおにーちゃんの姿を発見することができた。

だけど、おにーちゃんに駈け寄ることはできなかった。

それは彼がひとりじゃなかったから。

まるで売れっ子芸能人のように、何人もの女のコたちをとりまきにして、談笑しながらコッチに向かって歩いてきていたんだ。


学校中のどの先生よりも若くフレッシュな男のヒトがやってきたとあっては、女のコたちだって興味津々で放っておくはずがないってことなんだろうと思うけど、そもそもおにーちゃんもおにーちゃんだ。

< 20 / 263 >

この作品をシェア

pagetop