宝物
美咲は涙が止まらなかった。自分たちは両思いだったんだ…なのに、お互いのことを考えすぎて、すれ違っちゃったんだと。

「でも、平井にはその後すぐに結婚話が持ち上がったんだ。親同士が勝手に決めた話だった。もちろん平井にその気はなかった。だから、断ろうとした、けど、断ったら親父さんの会社がどうなっても知らないとか言われてさ。平井のやつ、あ~見えてもさ、そういうのに弱いって言うかさ。それで、結婚話を断れなかったんだよ。」

美咲は、前と比べて平井が全然変わっていなかったことが嬉しかった。

「なんか、先生らしいです。自分のことよりも、まずは人の幸せを考えているんだから。学校でもそうでしたから…」
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