恋愛射程距離

風子


チクタクチクタク。
時計の針が奏でる心地良いリズム。

「ねえ、私のこと好き?」

カチコチカチコチ。

「は?」
「ねえ、ちゃんと目を見て言ってみて?」
「え、ちょ!?」

「…と、上目遣いで問えば男性はあなたの虜。きっと上手くいくでしょう」

カチ。
時が止まった気がした。

「………風」
「さあ、今すぐに実践し」
「こら、風!」
「!?は、はい!」

カチコチチクタク。
時は再び動き出し、ふうっと一つ大きなため息。
目の前には食い入るように見つめていた雑誌からひょっこりと顔を覗かせてオドオドしている友人が。
あまりの間抜け顔に、私は思わず吹き出した。

「何よ、その顔」
「どどど、どの顔でしょうか」
「そんなことより、さっきの意味深な台詞の説明をしてもらってもいい?」
「意味深…ですか?」

友人はゆっくりと首を傾げて読んでいた雑誌をパタリと閉じた。
まあ、説明してもらわなくても大体の検討はついているのだが。
それでも気になることがただ一つ。

「好きな男でもできたの?」
「す!?」
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