聖職者

李楼は迷っていた。

だが、意外にも先に口を開いたのは凛のほうだった。

「・・・ねぇ」

凛は震える唇で言葉を紡ぐ。

「京さんと慎は?」

「・・・凛」

若干15歳のその少女は、見ていて痛々しかった。

「京さんと慎は生きてるの?」

「・・・」

李楼は黙り込む。

自分も生きていてほしいと願っている。

だが、現実はわからない。

変に期待を持たせるのは良くない。

「・・・私見てくる」

凛はぽつりとつぶやいた。

「凛」

「まだ生きてるかも知れない、誰にも分からない!」

凛が急に取り乱すように声を荒げる。

「落ち着いて」

李楼がなだめるように言う。

だが、凛には届かない。

「私見てくる!京さんと慎は生きてる!」

凛が興奮して立ち上がる。

手に持っていたカップが落ち、ガチャンと耳障りな音をたてる。

「凛!」

李楼も声を荒げる。

「死んでなんかいない!!」

凛が力を使い、本部長室に移動術の空間を作る。

「凛!!」

李楼はついにどなった。

普段は温厚な李楼の怒鳴り声を聞いた凛は、ビクリと肩を震わせた。

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