学園(序)
階段を下りて、校舎から離れた体育館へと向う。

時間はもうないが、憧れの人はサボリを決め込むだろう。

俺も授業に固執するつもりはない。

次の時間に体育はないようで、体育館に静けさが漂う。

体育館の裏に回ると、体育倉庫の扉がある。

外からでも内からでも入ることは出来る構造になっている。

扉に耳を当てると、声が聞こえてくる。

憧れの人の声。

予測は的中、中でやってることも想像はつく。

声というのも、喘ぎ声だからな。

ドアを開けようとするが、鍵がかかっている。

「ふう」

一息入れて、体に力を入れる。

「オラ!」

扉に蹴りを入れて、邪魔な壁をぶっ壊す。

大きな音が鳴ると扉は壊れ、中の様子が伺えるようになった。

中は湿っぽい空気を肌で感じる他に淫靡な香りが鼻を突く。

マットの上で重なる二つの影。

「またか」

俺は頭を抱えた。

「それはこっちの台詞アル」

憧れの人は、横たわる男の体に抱きついた。
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