恋はピンポンダッシュ!
その指先に想いを込めて…
「わあっ!びっくりしたあ!急に立ち上がるんだもの、この子ったら。」
「えっ、きゃあっ!…まっ、ママ!いつから私の後ろに…ああっ、またこそっと家の中に入って来て、私の事、驚かそうとしてたんでしょ!」
「…逆に驚かされちゃったけどね。ただいまぁ、な~つきっ!」
そう言うと、満面の笑顔で夏季の母は、後ろから夏季をギュッと抱き締めた。
「もう、ママったら…」
夏季は、少し照れながら言った。
その時、夏季の母は、テーブルに置かれてある例のノートに目が行き、夏季を抱き締めたまま、ひょいと右手でそれを手に取った。
「ああっ!」
夏季は、あせってノートを取りかえそうとしたが、両腕ごと抱き締められている状態では、何も出来ない。
「やぁん!見ないでよママぁ!」
「ええと、なになに、『恋なんてしたくないのに…』…あら、まあ~っ。やぁ~ん!いつの間にこんな素敵な乙女に変身してたのかしらぁ、我が家のお姫様は!」
「…もう!」
今の夏季には、顔を目一杯真っ赤にさせるしか抵抗する術はなかった。
< 21 / 29 >

この作品をシェア

pagetop