流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
「ゆき……」

ふと後ろで声がした。
幸村の震えた声。

自分が手を離してしまっていることに気付き、慌てて振り替える。


が。


「……ゆき、むら?」

見えていたはずの草原はなく、あったはずの穴がない。

「いや」


そんなはずない。
そんなはずない。


ここにくれば、いつだって幸村に会いに行ける。

そう思っていた。


「い、いた!幸姫!」

声がして、振り返るとそこには、髪も服も乱れきった玲子の姿があった。

「ごめんね、幸姫。ごめんね!無事でよかった」

そう言って、玲子はきつく、幸姫を抱き締めた。

「早く帰ろう。幸村も、幸姫のこと、待ってるよ」

玲子の言葉に、幸姫は頭をふるふるとふった。

「ゆきむら、いなくなっちゃった」

「え?」

幸姫の言葉に、玲子は首をかしげた。

「ゆきむら、いっしょ…いたの…でも……」


一緒にいた。
手を繋いで、一緒に、いた。

だけど。

一瞬。
ほんの一瞬、手を離して駆け出した。


ただ、それだけ。
それだけだったのに。


「ゆき…む……うっ…うわぁー!いやー!」


玲子の腕を振り払い、必死で茂みに開いているはずの穴を探した。

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